宮部みゆき「人質カノン」感想とあらすじ

 

宮部みゆきさんの短編集の人質カノンの感想

読む前の印象
タイトルを見ただけでは短編集だと思っていなかったので、カノンという名前の女の子が人質にとられてどうのこうのという話だと思っていた。


内容
七つの短編が集まった短編集だった。
その七つの作品の構図の殆どが同じで、

 

・あまり日常に満足していない主人公が突発的に起きた不可解な事件(話)を目撃、あるいは体験する
・その事件の断片的な情報に興味を持ち、深く調べるようになる
・その全貌を知った主人公がフィードバックを得るところで終わる

 

というもの。

 

 

あとはそれぞれの粗筋。

・人質カノン
 主人公のOLがよく行くコンビニに強盗が現れる。人質となったのは、店員と主人公と中学生の男の子と酔っ払いのサラリーマン。その犯人はフルフェイスヘルメットを被っていて、ポケットから赤ちゃんのおもちゃのガラガラを落とす。
カノンは、その時に流れていた曲の事をさしているのだと思う。
カノンコードとかいう音楽理論の事だろうか。

 

・十年計画
 作者が聞いた話。ノンフィクション的な短編。こっぴどくフラれたという女性が、相手を復讐の為に殺害を計画する。その為に自動車免許をとるが、すぐには実行せず、十年後に後回しにすることになる。

 

・過去のない手帳
 大学に行かなくなった大学生が、毎日清掃業のバイトをしている。空いている電車の荷物棚の上にある雑誌を手に取る。同時に手帳が落ちてくる。その手帳のアドレス欄には、手帳の持ち主の知人であろう一人の女性の連絡先と住所が書かれている。
放火事件が相次ぎ、住所と、その名前を新聞で見かける。だが、彼女は放火事件以前から失踪しているという。

 

・八月の雪
 『事故』で右足を失った少年が、引きこもるようになる。それから主人公の祖父が亡くなり、葬儀も終わった頃、遺品として文箱から出てきた祖父の遺書に興味を惹かれる。その遺書は数十年前に書かれたものだった。穏やかな祖父が若い頃に遺書を書いた理由。祖父の知らない一面を知りたいと思うようになる。

 

・過ぎたこと
 主人公は妻との間に子供がなく、そのことを気にしていた。ふと、電車の中で見かけた若者に見覚えがあり、そのことを思いだす。彼は昔、主人公の勤める会社で提供されていたボディガードのサービスに相談に来たことがあった。

 

・生者の特権
 二股をかけられていてその上フラれたOLが、自分が飛び降りて死ぬビルを物色している。夜中歩き回っている時に、小学校の門をよじ登ろうとする子供を見かけ、放火目的ではないかと疑い声をかける。

 

・漏れる心
 朝、子供に起こされた主人公は、購入したマンションの天井から、水が垂れてきてリビングがビシャビシャになっている事を知る。

夫の転勤によりマンションを売りに出す事を決めていて、オープン・ルームをする予定だったのだが知られてはまずいので取りやめにする。
 上の階に住んでいる大学生の部屋も水浸しになっていて、その母親が挨拶をしにくるのだが、金の工面が必要な時に裕福そうなその母親を見て主人公は機嫌を悪くする。
 ローン返済を考え、売却の値段を高く設定したのだが、大学生の両親がその部屋を購入するという。

 

人質カノン (文春文庫)

人質カノン (文春文庫)